新人が語る心に残る看護場面

2020.06.05 指輪

夜間に緊急入院したAさんを、日勤で受け持った時の話です。Aさんは認知症を抱えている方でした。前勤務者から「左手の薬指に指輪をはめているんですが、外れなくて。Aさんの許可はもらっているので、もし日勤帯で外れない場合は指輪を切って外してください。」と申し送りを受けました。私は左手の薬指にある指輪なので、結婚指輪かなぁと思いました。Aさんは認知症を抱えているし、指輪のことは忘れているかなと思いながら、Aさんに指輪のことを尋ねました。しかし、Aさんは指輪とご主人のことについて話し始めたのです。「この指輪、結婚した時に主人がくれてずっとしているの。やっぱり切るしかないのかしら。つけたまま入院するっていうのは無理よね…。」と寂しそうな表情をしていました。私は、やはり大事にしていた物なんだ、どうにかして取ってあげたいと思い、先輩に相談しました。まず手浴を実施しむくみを取るようにマッサージを行い、アルコール綿やいろんな石鹸を使用し、何度も挑戦しやっと指輪を取ることができました。Aさんの顔が明るく笑顔になり、「ありがとう。また退院して、指輪をつけられると思うとホッとしたわ。」とおっしゃってくださいました。Aさんの表情を見て、私もとても嬉しくなりました。

患者さんの思いに耳を傾けて、希望を叶えることはとても大切だと改めて思いました。患者さんの大切にしてきたこと、大切にしてきた物などを私も大切にして、患者さんと関わっていきたいと思います。

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