新人が語る心に残る看護場面

2021.01.26 おまえに洗ってほしかった

 

脳梗塞の既往があり、慢性腎不全から透析導入をしていたAさん。Aさんは自分の思い通りにならないと、スタッフに強い口調で話したり、叩くような素振りを見せることもありました。時には透析を拒否することもありました。Aさんを受け持つことが多かった私は、Aさんに必要なケアをしているのに「お前じゃ話にならねぇ。師長を呼べ。」、「なんでいつもお前なんだ。他の看護師を呼べ。」と言われてしまうこともありました。私はAさんに拒否されることや強い口調で話されることに、ストレスを感じながら日々関わっていました。

しかしAさんを繰り返し受け持つことで、なぜAさんがそのような態度をするのかわかってきました。私は自分の考えばかりAさんに伝えていて、少しもAさんの立場になって考えていなかったのです。そのことに気づいてから、私は自分の言動や行動を修正していきました。するとAさんの拒否や強い口調は減っていったのです。Aさんからは「おう、今日はお前か。体拭いてくれよ。」とおっしゃってくれるようになりました。

ある日、早出業務をしながらAさんの部屋の前を通り過ぎると「おーい。」と呼ぶ声が聞こえてきました。Aさんのもとを訪ねると、「頭洗ってくれよ。お前の暇な日でいいからさ。」とおっしゃってくださいました。ちょうど翌日私が受け持つ予定だったので、「じゃあ明日、私が担当なので明日洗いますよ。」と伝えると、Aさんはにっこり笑いながら「本当か。お前に洗ってほしかったんだ。」と嬉しそうにおっしゃってくださいました。

次の日、出勤するとAさんの名前がありませんでした。まさかと思いながら確認すると、Aさんは夜間状態が急激に悪化し、亡くなっていました。今でも、前日のAさんの笑顔を思い出すと、Aさんの希望を叶えることができなかったことを悔やんでいます。そしてAさんとの関わりから、患者さんの立場になって考えて行動するということを学ばせていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。

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