新人が語る心に残る看護場面
2020.05.22 患者さんを理解する
Aさんは肺がんにより無気肺があり、胸水貯留でドレナージを施行し、放射線治療を行っている方でした。Aさんは毎日、ベッドに横になりテレビを見ながら過ごされていました。入院が長期化するなか、そのストレスもあってか新人看護師に対して強い口調で話し、私にとっては気難しい方という印象でした。食後に内服薬を渡しに行くと「置いておけって言ってるだろ!」、トイレへ行くために酸素チューブの付け替えを行おうすると「自分でやるから!やんなくていいから、貸して!」とおっしゃり、毎日のように強い口調で話していたため、次第に私の中でも「受け持ちたくないな。怖いな。」と思うようになりました。そしてどうして新人看護師に対して、強くあたるのか不思議でたまりませんでした。
ある日、Aさんの長かった放射線治療が終了しました。その帰り道「やっと放射線治療が終わったよ。あれね、けっこう辛かった。」と、初めて自分の思いを私に話してくださいました。私はその言葉に「はっ」としたのです。今までAさんの気持ちを分かっていなかったことに気づいたのです。あんなに強い口調で話していたけれど、本当はつらくてさみしい気持ちや、今後の不安な気持ちでいっぱいだったのではないかと思いました。私のAさんの見方が変わったのです。その後、私はAさんに何ができるのだろうか、どう関わればよいのか、カンファレンスを通して先輩からアドバイスを頂きました。
患者さんの気持ちを理解することで、看護の視点が変わると気付いた経験でした。まずは私たち看護師の思いで患者さんを看るのではなく、私たちが患者さんを知ることから看護が始まるのだと改めて学びました。