新人が語る心に残る看護場面
2020.05.22 寄り添うケア
入職して5か月が経ち、点滴投与の自立に向けて先輩に技術をチェックしてもらっていた時のことです。その患者さんは、緊急入院した生後1か月に満たない小さな新生児でした。私はご家族とともに病室へご案内し、ご家族へわからないことや不安なことなどを確認しました。その後、点滴を行うために先輩とともに患児のもとへ向かいました。私はご家族に不安を与えないよう、氏名の確認や薬剤の説明、正しい手順で行うことを意識して点滴を開始しました。気づくと患児のお母さんが涙を流していました。私はその姿を見て、戸惑ってしまいました。しかしそばにいた先輩は、すぐに「点滴がたくさん付いているのを見て、びっくりしてしまいましたよね。」とお母さんへ声をかけました。そして、なぜこの点滴が必要なのか、一般的にどの位の期間投与するのかをわかりやすく丁寧に説明し、「心配なことがあったら、どんなことでも遠慮せず聞いてくださいね。」と優しい口調で話しました。
私は「点滴をつける」ということにとらわれてしまい、ご家族の気持ちに寄り添えていなかったと思いました。それからご家族が面会に来られた時は、日中の様子を伝えるとともに心配なことはないかを積極的にうかがいました。患児が退院するとき、お母さんから「丁寧に見てくださりありがとうございました。安心して入院させることができました。」との言葉をいただきました。
私は新人です。まずは業務をきちんと覚えなくてはならないと、正しい手順や技術を行うことばかりになっていました。しかしこの患児とご家族との関わりを通して、患者さんと家族に寄り添う看護を行うことを忘れてはいけないと思った出来事でした。