新人が語る心に残る看護場面
2020.10.12 聴く
夜勤で観察室を受け持っていたときのことです。既往に認知症があり、病気への不安で連日不穏状態となっていたAさんがいました。Aさんはその日もずっと病室で「看護師さん!助けてください!ねぇ!いるんでしょ!助けて!」と叫んでいました。私は目の前の業務をこなすことに精一杯で、なかなかAさんの対応をすることができませんでした。消灯近くになっても落ち着かなかったので、寝る前に処方されている薬を内服してもらい様子をみることになりました。消灯後、病室をラウンドしているとAさんは「苦しい!助けて!看護師さん!お願い!」と声をあげており、薬は効いていない様子がうかがえました。私はベッドサイドでAさんと目線を合わせて話を聞いてみました。やはりAさんは、自分の体が病気のせいでおかしくなってきていることへの不安を強く訴え、頻呼吸になっていました。私はAさんの手を握って「怖いですよね。苦しいですよね。でも大丈夫ですよ。私たちがいつでもすぐにAさんのところに駆けつけられる場所にいますから、安心して下さい。いったん落ち着いて私と一緒に深呼吸をしてみましょう。」と声をかけると、Aさんは私の手をぎゅっと握り返して一緒に深呼吸をしてくれました。Aさんは次第に落ち着き、私は「ゆっくり休んでください。」と一声かけ、ベッドサイドを離れようとしました。そのときAさんは穏やかな顔で「ありがとう」と言い、入眠されました。
患者さんに寄り添い、訴えを聞くことが看護の本質であり、不安を取り除く特効薬だと改めて感じた場面でした。