新人が語る心に残る看護場面
2020.10.12 退院前夜
ある夜勤の日、翌日に退院を予定しているAさんを受け持っていました。Aさんは手術目的で入院され、手術後の経過も問題ありませんでした。私は「明日退院ですね。良かったですね。」と声をかけました。Aさんも笑顔を浮かべて「良かったです。」と答えていました。
しかしその後、夕食が全く食べられず、嘔吐までしてしまいました。急きょ医師に診察してもらうことになりました。緊急でレントゲンや採血など検査を行った結果、イレウスとなったことがわかり、すぐに胃管が挿入されました。翌日の退院は延期となってしまいました。その晩Aさんは、たびたび腹痛を訴えました。私はその都度Aさんのもとを訪室し、胃管から用手的吸引を行ったり、「お腹は痛くないですか?」「明日退院だったのに、大変なことになってしまいましたね。」「いつでもナースコールで呼んでくださいね。」と、不安を軽減できるように声掛けに努めたりしました。
その日から数日後、Aさんのイレウスは改善し退院が決定しました。そして偶然にも、Aさんの退院前夜の受け持ちは私です。Aさんのもとへ夜勤の受け持ちの挨拶に伺うと、Aさんは笑いながら「前の時は大変だったからね。明日まで何もないといいね。」とおっしゃいました。一晩体調を崩すことはなく、退院の日の朝を迎えることができました。朝の検温の時に「無事、退院できますね。良かったですね。」と、Aさんへ声をかけました。するとAさんは「本当にお世話になりました。前の退院前の夜、一番苦しいときに支えてくれて、頼りになりました。ありがとう。」とおっしゃって下さいました。
一度退院が延期になったAさんが、退院できたことがとてもうれしかったです。私が行ったことは、Aさんの話を聞いたりラウンドの回数を増やしたりしただけで、専門的で難しいことはしていないと思います。しかしAさんから感謝の言葉をいただき、これが寄り添う看護なのだと学びました。