新人が語る心に残る看護場面
2021.01.26 1人の受け持ち看護師
脳腫瘍で化学療法をおこなうために入院していたBさんの奥さんとの話です。ある日Bさんのベッドサイドにあいさつに行くと、すごく暗い表情をしたBさんの奥さんがおり、「こんにちは。お世話になってます。」と挨拶をして下さいました。ふとBさんの方を見ると、とても不機嫌そうな顔をしてそっぽを向いてしまいました。私は奥さんに、その日のBさんの様子を話しながら、最後に「何かあったら呼んでください。」と伝えて部屋を後にしました。するとすぐにBさんの奥さんが私のところに来て、「このまま私がいたら、手を出されそうなので帰ります。機嫌も悪いし。よろしくお願いします、看護師さん。」とおっしゃいました。そこで私は「奥さんも毎日来られて大変ですよね。大丈夫ですか。無理しないで、辛いことでもなんでも話してくださいね。」と伝えました。途端に涙ぐみながら「わかっているんです。あの人が辛いのも。でも私にはどうしようもできなくて。そう言ってもらえるだけでも助かります。ありがとう、看護師さん。あなたのお名前は?」と聞いてくださいました。その日から奥様は、私のことを必ず名前で呼んでくださるようになりました。そしていろんなお話をして下さるようになりました。
私は患者さんや家族との時間の大切さに改めて気づかされました。看護師からみれば、受け持ち患者さんの一人となってしまいがちです。しかし患者さん、ご家族からみれば、一人の受け持ちの看護師だということも忘れず、人とのかかわりを大切にしていきたいと強く思う出来事でした。