新人が語る心に残る看護場面
2019.03.27 見えていなかったこと
Aさんは癌が骨転移しており、放射線治療のために入院されていました。数日ぶりにAさんを受け持った時のことです。下肢に麻痺も出ていて動くのは困難でしたが、尿瓶を使って上手に排尿している方だったなと、前回受け持った時の情報を思い出しながら検温に伺いました。
前回と同様に笑顔で「お願いします」と挨拶してくれるAさんでしたが、どこか臭いがすると思いズボンを見ると濡れていました。「ごめんね、ちょっと失敗しちゃった。」と笑顔を崩さず話すAさんに「いえいえ失敗することもありますよ。着替えましょう」と清拭と更衣をしました。そのようなことが数時間の間に3回ほどあり、私は「お小水の時はナースコールで呼んでください。お手伝いしますね。」と提案しますが「大丈夫ですから」と笑顔で話されるだけです。尿取りパットも提案しますが、同様の反応でした。
放射線治療が終わったAさんをお迎えに行きました。放射線科のベテラン看護師さんが申し送りの時に「Aさんて、本当に心が強い人だよね。辛いだろうに、いつも笑顔で。昔、少年兵で沢山苦労したみたいよ。1人で何でもしてきた人だから、今でも自分で何でもしたいみたい。」と話してくれました。
その時、いかにAさんのことが見えてなかったのか気づかされました。そして、お小水の時に教えてくださいと提案したことも、Aさんの自尊心を傷つけてしまったと反省しました。病棟に戻ってから、リーダーさんに今日の流れを相談し、セルフケア援助の方法を考えました。患者さんのことを見ているようで見えていなかったと言うことを反省する貴重なきっかけとなりました。また、その日以降、Aさんが気軽に話しかけてくれる様になり、看護師が患者さんを理解しているかは、患者さんの側からも分かるのだと実感しました。