新人が語る心に残る看護場面
2019.06.04 声かけ
ある日、救急車で運ばれてきた患者さんは、20代のアメリカ人男性でした。日本語は全く話せない患者さんにどう話しかけようかと悩みながら、入院受け入れを続けました。私は「病院に着きましたよ」「安心してくださいね」と言葉にしようとしたのですが、患者さんの状況を見て、思わず言葉を飲み込んでしまいました。検査するとやはり、C4骨折で、今までのように体を動かせるようにはならないと、そう知った上でケアに移っていきました。「Are you OK?」となぜ口から出てこなかったのかと後悔が残ります。
その後、ICが始まり私は同席しました。正直、何を話しているのか詳細を理解することはできませんでした。医師の真剣で丁寧な口調、低めのトーン、患者さんの上司・同僚の苦悶の表情、涙をこらえる仕草、そして取り乱すことなく静かに、無表情で説明を聞く患者さんは天井の一点を見つめる様子に私は飲み込まれ、ますます言葉は出ず、看護師としての役割を全く果たせませんでした。
声かけによる精神的な援助が思うようにできなかったのは、単に患者さんがアメリカ人だったからという理由だけではなかった気がします。仮に、患者さんが日本人で言葉の壁がなかったとしても適切な声かけが出来ていただろうか疑問です。
「どうして手足が動かないのでしょうか?」「一生このままですか?」という問いに、私はどう答えるのか、同じように喉に言葉が引っかかるかもしれない・・・とそんな不安が過ぎる体験でした。