新人が語る心に残る看護場面
2021.11.04 相手の立場に立って
入職してまだ間もない頃のことです。私は脊髄損傷のAさんを受け持ちました。Aさんはまだ30代と若く、3人の男の子と奥さんがいる家庭を持つ男性でした。Aさんは気管挿管され、鎮静下で人工呼吸器を装着しています。Aさんの奥さんは毎日面会に来られ、鎮静で意識が朦朧としているAさんに涙を見せずに話をしていました。私はそんな奥さんにどんな声をかけたらよいのかわからず、奥さんとAさん2人の時間を作っていました。
そんな中、先輩看護師が温かいタオルを持って奥さんのもとへ行くと、今日の一日の様子や出来事を話し、タオルでマッサージができることや、ビニール袋を手にはめて除圧することでも大分違うことを教えていました。その日の業務終了後、私は先輩看護師に家族との関わりについてどうすればいいか質問をしました。先輩は「自分の家族と照らし合わせたら対応方法がわかってくるよ。今、家族はどんな状態なのか、自分にできることは何だろうかと考えると思う。」と教えてくださいました。
それからしばらくしてAさんの状態も改善し、通信機器でコミュニケーションが取れるようになりました。Aさんの奥さんは「本当に一時期はどうなることかと思いました。看護師の皆さんの励ましが、とてもうれしかったし力になりました。」とおっしゃってくださいました。
私はこの経験から、急性期の現場では患者さんご家族とは関われる時間は少ないですが、「相手の立場に立って考える」ことをしていこうと心に決めました。