新人が語る心に残る看護場面
2022.09.30 最期の別れ
入職してから2か月くらい経ったときのことです。自宅で心肺停止になり救急搬送されたAさんがいらっしゃいました。Aさんは蘇生できましたが蘇生後の全身状態が悪く、今後状態が悪化したときには自然な形で最期を迎えるという方針でした。Aさんのご家族は、コロナの状況もあり面会ができません。そのため入院時に「なくなるときにはそばにいてあげたい。よく頑張ってる。」と、Aさんに声をかけ続けていました。入院翌日、Aさんの全身状態は悪化し、心拍数が低下していきました。ご家族に来院して頂くよう連絡し、看護師3~4人がAさんの元に行き、「もう少しでご家族来るよ。」とベッドサイドで声をかけ続けました。その後ご家族が到着する前に、心停止となりました。私たち看護師は「よく頑張ったね。もうすぐご家族来られるからね。」と伝え、手を胸元へ合わせたとき、心停止したはずの心拍波形が動き出したのです。心拍数も徐々に上昇し、とても驚きました。その5分後にご家族が到着され、Aさんとの最期の時間を過ごしてもらおうとその場を離れました。
私はAさんのエピソードから、人が生きようと頑張っている身体の反応や生命力、予測できない患者さんの変化がある、ということを実感し考え直すきっかけにもなりました。また現在はコロナ対策のため、面会制限がされています。だからこそ、お看取りのときには患者さんの変化により早く気づき、患者さんとご家族が最期の別れができるように、環境を整えていくことも大切なことだと思いました。