新人が語る心に残る看護場面

2023.04.27 患者さんからのお願い

くも膜下出血で左上下肢の麻痺があり、左上肢には拘縮が出現し始めていたAさんについてです。私はAさんが転入してきてから転院されるまで、受け持つ機会がたくさんありました。Aさんは左上肢の麻痺と拘縮に対して「この腕をどうにかしてください。」と訴えることが多く、腕の下に枕をはさんだりしながらポジショニングを整えていました。体動が激しいこともあり10分ほどでポジションがずれてしまうのでAさんから、「どうしてあなたは僕の要望を聞いてくれないんですか。」と怒られてしまうことがたびたびありました。また、検温の時には血圧測定中にAさんが動いてしまうことが多く何度も測定し直していると、「あなたはなんでそんなに遅いんですか。早くしてください。」と言われ、車いす移乗の時には「この前乗せてもらう時、落ちそうになったんです。僕は患者なんですからしっかり乗せてください」と言われることもありました。Aさんに怒られてしまうことに対して、最初は受け持ちたくないなというネガティブな思考になっていましたが、受け持ちを重ねるごとにどうしたらAさんの要望に応えられるかを考えられるようになり、枕のはさみ方を工夫したり血圧を測るタイミングを工夫したり、車いす移乗の時にAさんのADLを考慮しながらAさんに合わせた移乗を心がけ、ポジティブな声かけをしているとAさんから怒られる回数は徐々に減っていきました。

転院前日、私はAさんの受け持ちが最後で、転院当日はAさんのお見送りをすることができないので勤務終わりに最後の挨拶にAさんの元へ行きました。挨拶し終えるとAさんから、「患者のお願いをしっかり聞いてくれるYさんの姿は素敵です。これからも頑張ってくださいね。」「最後に車いすに乗せてもらってもいいですか。Yさんだけは失敗したことがないんです。」という言葉をいただきました。その場には夜勤でAさんを受け持っていた私のプリセプターの先輩がいて、「嬉しいね。AさんにYさんの頑張り伝わっていたんだよ。」という言葉を頂きました。Aさんとプリセプターさんからの言葉を受け、患者さんの思いや要望を汲み取り丁寧に対応していくことの大切さや個別性を考慮していくことの大切さを学ぶことができました。

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