新人が語る心に残る看護場面

2023.08.17 苦痛を軽減するために

冠動脈バイパス術後、左横隔膜神経麻痺等の理由により自力で排痰困難なAさんについてです。Aさんは自力での喀痰排出困難なため吸引が必要でした。しかしAさんにとって吸引がとても苦痛であり暴れるため看護師2名で実施していました。

私が手術後6・7日目と受け持った際「もう嫌だ、死んでもいいからやりたくない。毎日やるとか嫌だ。」と涙を流しながら訴えていました。Aさんの吸引をやりたくないという思いを尊重したいが、誤嚥性肺炎など合併症のリスクがあるため吸引はしなければいけない状況に対し、少しでも吸引の回数を減らすことができないだろうかと考えました。リーダー看護師に相談し咳嗽、トリフローの実施を促しました。また車椅子乗車や歩行リハビリなど離床を促しました。しかし喀痰は貯留し、喘鳴があり咳嗽を促しても喀痰が排出できなくて吸引が必要であることを説明しました。合併症のリスクを説明し実施する時間を10秒間だけと約束しても拒否されます。看護師2名で実施するとAさんは顔面を横に振り、腕を振るって全身で拒否を示し、涙を流していました。実施中、実施後にねぎらいの言葉をかけていました。

そのような状況が続く中、娘さんが荷物を持ってきた際に面会はできませんが、棟内の入り口とお部屋の入口越しに顔を合わせて少しお話する機会を作りました。Aさんは自分で歩いている姿を見せることができてとても嬉しそうでした。

Aさんの吸引の苦痛をとることはできませんでしたが、咳嗽や離床の促しにより吸引回数を減らしたこと、家族に会うなどリフレッシュを行ったことはAさんにとって治療に対する前向きな気持ちにつながったのではと考えています。しかしまだまだ方法はたくさんあると思うので、これからも日々看護していきたいと思います。

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