新人が語る心に残る看護場面
2023.10.30 患者さんから教えてもらったこと
入職して半年が過ぎたころに受け持ったAさんのことです。Aさんは突然頸椎症性脊髄症と診断され、下肢は完全麻痺となり上肢はわずかに動かせるような状態でした。下肢麻痺に加え、膀胱直腸障害もあり、排泄はAさんの思い通りにはいかず、上肢もスムーズに動かすことができないため、食事は看護師の介助で摂取している毎日を過ごされていました。
しかし、Aさんはいつも明るく前向きに、「少しでも以前の自分に戻れる様に」とリハビリに励んでいました。その頃、私は日勤と夜勤の勤務スケジュールに慣れることや業務を行うことに毎日必死な思いでした。Aさんはそんな私を見て、「新人の〇〇さんは大変だろうけど、本当によくやってくれている、いつもありがとう。お互い大変だけど一緒に頑張ろう」と気遣ってくださる言葉をかけてくれました。その時に、私はハッと気づかされました。本当は私がAさんの力になれるような言葉や行動を看護として提供しなくてはいけないのに。Aさんは、突然今まで通りの生活ができなくなり、苦しみや悔しさ、やりきれない怒りもあっただろうに、私は自分のことで精一杯で必死で余裕のない姿を出して今って本当に申し訳ないと。
一人前の看護師になれるまでは、まだまだ人としての成長と努力が必要で時間がかかります。それでも患者さんは常に目の前にいて、何かしらの疾患と闘っています。いくら私が必死だったとしても、作業をこなしていくことのないように、患者さんの些細な変化や気持ちに気づけるように向き合って仕事をしていきたいと思いました。
Aさんはリハビリ専門病院へ転院となりました。今でもAさんの前向きな姿を思いだします。Aさんなら、自分で出来ることが増えているだろうと想像できます。Aさんとの関わりから学んだことを忘れずに、これからも看護師として頑張って働いていきたいです。