新人が語る心に残る看護場面
2018.06.30 手術室での看護
産婦人科手術の話です。Aさんはとても恐がりで、痛いことが大の苦手であると術前訪問に行った看護師から情報を得ていました。手術室に入室したときから表情は硬く「怖いです」という発言が頻回に聞かれました。私は笑顔で接することや、ゆっくり優しいトーンでの声かけを心がけました。
硬膜外麻酔が始まると患者さんは左側臥位になり、膝を抱えるような体位になります。下になっている左腕は前に突き出すように伸ばされていたので、私はAさんの体を支える役割を先輩に代わってもらい、目線を合わせるためにAさんの前にしゃがみ手を握って声をかけ続けました。Aさんの手はとても冷たく、小さく震えていました。私はその手を温めるように包み、さすりながら「大丈夫ですよ」「痛いところはありませんか?」「今○○をしていますよ。」と声をかけ、深呼吸を促し、不安であふれてくる涙をぬぐっていました。Aさんは「はい、はい。」とうなずき、私の手を爪の痕が付くほど握っていました。
手術は無事に終わり、麻酔から覚醒した患者さんは心から安心したような表情で「手が痛かったですよね。すみませんでした。ありがとうございました。」とおっしゃいました。
入職して数ヶ月、私は術式や機械を覚えることに必死になっていました。私の声かけが本当にAさんの不安軽減に繋がったのか分かりませんが、今回のエピソードを通して初めて看護の片鱗に触れられたような気がしました。