新人が語る心に残る看護場面

2025.12.19 患者さんの思いに寄り添う看護

入職して半年が経った頃、担当した膵体部癌末期のAさんは、痛みにより体が自由に動かせなくなり入院されました。

入院当初から担当することが多くありましたが、Aさんはいつも表情が暗く、看護師の質問に対して「はい。」「ありがとうございます。」と端的に終わってしまうような患者さんでした。しかし入院から1週間後、清潔ケアを行なうため訪室すると、「痛みがひどいし、トイレのため何度も起きて、夜は全然眠れていないの。朝ゆっくり寝たいのに足音とか人が出入りして。看護師さんは患者さんありきでしょ。今は休ませてください。」と初めてAさんが自分の思いを私に訴えました。私はAさんに拒否されたと思い、Aさんとの関係性に悩みました。すると先輩看護師から「Aさんの思いを聞いてあげたらいんじゃないかな。」と助言を頂きました。そこで、今までは治療のことや症状についてしか話していなかったのですが、Aさんの思いを傾聴すると、徐々に表情が豊かになり家族の話や故郷の話等、色々な話をしてくれるようになりました。退院の日、最後の挨拶に伺うと「ありがとうね。ちゃんと話を聞いてくれて嬉しかった。あなたは絶対いい看護師になるよ。」と涙を流してくださりました。

入職してからできることが増えた反面、多重課題に追われ患者さんの思いに寄り添う余裕がなかったことに気づきました。これからは、この気づきを活かして患者さんの思いに寄り添える看護師を目指したいと思いました。

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