新人が語る心に残る看護場面
2019.09.19 忘れられないAさん
Aさんは退院間近に誤嚥性肺炎を起こしICUへ転棟しました。状態が安定し、病棟に戻って数日後の夜勤で私が受け持った時のことです。呼吸苦などから夜間せん妄、不穏になってしまい、酸素マスクを外したり「家族へ遺言を」と電話をかけたりしました。終わるとベッドへ戻りますが、数分後にはナースコールを押し続け、訪室すると「そこに俺を殺そうとしている人がいる。あなたが守ってくれ。あなたが離れたら俺は殺される、お願いだから側にいてくれ。」とおっしゃいました。幻視や幻聴も出てきました。私は不穏の患者さんを初めて見たため、とても驚きました。先輩看護師に報告し、鎮静剤を投与しましたが大きな効果は得られませんでした。それどころか「俺に毒を盛っているのか。俺を殺そうとしているんだな。恐ろしい!」と言い、点滴のルートを結んだり、爪切りで切ろうとしていました。点滴の必要性も先輩看護師と説明しますが、不穏状態は続きました。
私は少しでもAさんの側にいようと、ベッドサイドやナースステーションでお話を聞きました。しばらくすると「ありがとう、少し休む」と言い、Aさんはベッドへ戻りました。熟睡は出来なかった様子でしたが、興奮状態は落ち着き朝を迎えることが出き、ホッとしました。
その後、一時回復し食事も取れるようになりましたが、再び状態悪化し1ヶ月後に亡くなりました。元気なときはお話ししながら歩行練習したことや、ご家族とたくさんお話したことを思い出すと悲しい気持ちになります。長期の入院だったこともあり、忘れられない患者さんです。