新人が語る心に残る看護場面

2019.10.17 そばにいる、ということ

 Aさんは気管切開術をして人工呼吸器を使用している方でした。そのためAさんの訴えがうまく伝わらないことも多く、本人も何度も訴えるうちに興奮して呼吸回数や気道内圧が上がり、受け持ち看護師ももどかしい思いをしていました。

ある日、Aさんを受け持たせていただきました。Aさんの訴えがある前に、こまめにAさんのもとへ行き積極的に関わってみようと思いました。目があったらAさんに話しかけ、呼吸器のアラームが鳴ったら痰の吸引や「ゆっくり呼吸をしてください」と近くで声をかけました。また私から色々な提案をし、これから行うケアの内容を詳しく説明しながら実施しました。するとその日は一日中穏やかに過ごすことができていて、自ら何か訴えることもほとんどありませんでした。

勤務交代前の最終ラウンドで「夜勤の看護師に変わりますね。夜に何かしてほしいことがあれば伝えますよ。」と声をかけると、筆談で「ありがとう。」と伝えてくださりました。その時、私は初めてAさんの笑顔を見ました。今まで苦しそうな表情や怒った表情しか見たことがなかったので、今日一日を行ったケアがAさんに安心感を与えることができたんだと思い、嬉しくなりました。

他の業務に追われて、なかなか一人一人の患者さんにじっくりと関わる時間が持てないときもあります。その中でもなるべく患者さんの近くにいて、寄り添うということが大切であり、安心感につながるのだと感じました。

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