新人が語る心に残る看護場面
2019.10.17 ありがとう
Bさんは食道と胃の術後で、縫合不全のため長期入院をしていた方でした。治療のため、禁飲食の時間が長く続いていたこと、多数のドレーンが挿入され、その刺入部痛があることで、Bさんは精神的な苦痛が生じていました。
ある日、Bさんが「いつまでこの状態が続くんだろう。それならいっそ死んだほうがマシ…。」とつぶやきました。その時、私はただただ「一緒に頑張っていきましょう。」としか言えませんでした。私はBさんと会話をしながら、「Bさんはもう何か月も頑張っているのに、私のこんな声かけで本当にいいのか…。」と悩んでいました。それ以降はチームが変わってしまい、Bさんと関わる機会は少なくなってしまいました。
それから数週間経った頃、Bさんが一人で廊下を歩いているのを見かけました。Bさんはドレーン類が全くなく、笑顔でシャワーから出た後の姿でした。私はとっさに「もう(ドレーン類は)全てなくなったんですね。」と声をかけたら、「おかげさまで。」と笑いながら返事をしてくれました。私はBさんがシャワーできるまでに回復できたこと、それをBさんと一緒に喜ぶことができたことに嬉しくなりました。その数日後、Bさんは退院が決定しました。退院当日は大勢の看護師に見送られ、「本当にありがとう。」とおっしゃいました。その時、私は泣きそうになりました。患者さんのたったその「ありがとう。」の一言を笑顔で、元気に言ってもらえるように、患者さんの心に寄り添っていける看護師になりたいと思いました。