私たちのめざす看護
私たちの看護
2019.04.30
患者さんに色々な選択肢を提供できる看護を目指して
B4東病棟は、耳鼻咽喉科・頭頸部外科、泌尿器科、救命科からなります。耳鼻咽喉科・頭頸部外科は中耳炎や副鼻腔炎などのほか、咽頭がんや喉頭がん、舌がんなどの患者さんが、手術や化学療法、放射線治療を目的に入院されます。
数年前、中咽頭がんの手術をしたAさんは、中咽頭腫瘍を切除し気管切開をしました。また、切除した舌を補うために前腕の筋肉を移植しました。手術後の経過は良好で、経腸栄養と並行して言語聴覚士による経口からの食事のリハビリが開始になりましたが、上手に飲み込めない日々が続きました。ある時、むせながらも小スプーンで少しずつ食事を摂っていたAさんに「食事はどうですか」と声をかけました。するとAさんは「どんなに頑張っても飲み込みが上手くいかないんだよ。頑張っているのに俺が悪いのかよ。もう嫌になっちゃう、駄目だ辛いよ」と泣きながら私に言ってきました。私は「辛いですよね、Aさんは悪くないですよ。移植した所を動かすのは難しいんです。今まで同じ手術をした患者さんは、みんな頑張ってきました。Aさんも毎日頑張っていますよ」と励ましました。しかし、その後もAさんは食事を上手に飲み込むことができませんでした。私は先輩看護師や言語聴覚士に相談し、選択肢の一つとしてAさんに胃瘻造設を提案しました。Aさんは、最終的に胃瘻を造設し経腸栄養の手技を覚えて退院しました。今は自宅で趣味の野菜作りを楽しんでいるようです。外来の待ち時間に病棟に来てくれることもあります。Aさんは『あの時は悩んだけれど、胃瘻を造って良かったよ』と言ってくれます。
頭頸部は、呼吸・咀嚼・嚥下・発声・聴覚など人間が生きるうえで重要な機能があります。手術後は嚥下障害や失声を余儀なくされ、今までとは違う生活を送らなければならないこともあります。私たちは、患者さんの一番近くにいる存在であり、ときに患者さんの生活を支える職業です。患者さんが『良かった』と思えるよう、根拠に基づきながら色々な選択肢を提供できるような看護を目指していきたいと思います。
(写真は電気喉頭のトレーニング風景)
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