私たちのめざす看護
私たちの看護
2020.10.12
その人らしい暮らしを大切にした退院支援
高齢者は入院をきっかけに、入院前の暮らしに戻れなくなることがあります。その理由は、病気の発症や進行だけではなく、入院環境により、生活リズムが崩れ、筋力や認知力の低下などを引き起こすことがあるからです。退院支援看護師は、そのような患者さんを、病棟看護師と協働して「医療」と「生活」の両面からアセスメントし、これからの暮らし方を、患者さんやご家族と一緒に考え、院内外の多職種と調整を行い、安心して退院できるようにしています。
先日、90歳代の胆嚢炎で入院された患者さんは、入院前の暮らしでは、トイレの失敗はなく、杖歩行で階段昇降ができ、ディサービスに通うことを日課にされていました。自身の病状や入院中であることを認知することは難しいようで、数日間の安静、禁食、点滴、胆管ドレナージ治療中「もう、いいからほっておいて」と活動性の低下がみられました。また、食事が開始されても少量しか口にしませんでした。
退院支援看護師は、病棟看護師、主治医とカンファレンスをしました。「医療面」では、まだ数週間の胆管ドレナージが必要であること、「生活面」では、入院が長くなることで、入院前の暮らしができなくなる可能性があることを共有し、ご家族と話し合うことを決めました。
後日、カンファレンスの結果をご家族へ伝え、今後の生活に関する意向を確認しました。ご家族は、「高齢なので、管が入った状態で病院のベッドにいることよりも、できる限り本人らしく暮らせることを大切にしたい」との思いを聴かせてくれました。そこで、ドレナージ治療を継続した状況で今までの暮らしができないか、担当ケアマネジャーも交えて調整することを進めました。
ケアマネジャーが来院し「ディサービスのみんなが待っていますよ」と声をかけると、患者さんに笑顔がみられました。ご家族とケアマネジャーに、ドレーンの固定方法や、排液処置の仕方、自己抜去の予防策、清潔ケアなどを指導させて頂き、ケアマネジャーは、ディサービスのスタッフと指導内容を共有して、まもなく退院することができました。
ご家族の、本人らしい暮らしを大切にしたいという思いを中心に、退院支援できたと思う患者さんでした。
退院支援看護師 山本亜希子
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