2025.12.23
外来化学療法における“その人らしさ”を支える看護 -小さな関わりの積み重ねからー
抗がん剤治療は、副作用や体調変化への不安と向き合いながら通院を続ける、負担の大きい治療です。最近は、新しい抗がん剤の開発が進み、治療が長期に継続できるようになった一方で、患者さんが感じる“治療疲れ”や、言葉にしづらい緊張や迷いは、より複雑になっているように思います。それでも、日々治療に向き合い通院を続ける患者さんの姿に、私は静かな強さを感じています。
その強さを支えるためには、安心できる環境と、些細な変化にも寄り添える支援が欠かせません。だからこそ、私たち外来化学療法センターが大切にしているのは、患者さんの小さな変化を見逃さない「気づく看護」です。診察の場では伝えきれなかった体調の変化や不安が、看護師との問診で初めて明らかになることも少なくありません。短い時間の中で、表情や声のトーン、ちょっとした仕草など、言葉にならないサインに気づくことを大切にしています。また、血液データや処方内容、副作用予防薬の有無などを丁寧に確認し、多角的に安全性を判断することも外来の重要な役割です。医師・薬剤師・看護師がそれぞれの視点で確認し合う“チームの目”が、安全な治療を支えています。
通院治療は限られた時間の中で進みますが、その短い時間にこそ「安心感」を届けたいと考えています。「ここに来ると安心する」「いつもの看護師さんを見るとほっとする」と言っていただけることがあります。これは、特別なことをしているわけではなく、スタッフ一人ひとりが日々変わらない丁寧さと確かな技術で治療を支えているからだと思います。点滴の時間だけでも、緊張が少し和らぎ、気持ちが軽くなるような空間をつくりたい、その思いで日々の看護に向き合っています。
病院に来ることは、決して楽なことではありません。そんな中でも治療に向き合い続ける患者さんの強さを、私たちは日々感じています。その気持ちに寄り添いながら、専門職として安全と丁寧さを積み重ね、外来で過ごす時間が少しでも安心できるものになるよう努めています。ときには「ありがとう」と声をかけていただくことがありますが、その一言に私たちが力をもらい、関わりが届いていることを実感します。
これからも経験を糧に、患者さんがその人らしく治療を続けられるよう支えていきます。
がん化学療法看護認定看護師 加藤教子