新人が語る心に残る看護場面

2019.04.30 私にできること

入職して3ヶ月が経ったある日の事でした。
「そうなのですね。厳しいって事なのですね。」Aさんとご家族同席の上で医師から「現状はかなり厳しく、数ヶ月の余命である」と病状説明がありました。一瞬時間が止まったかのように、その空間から音が消えシーンとなりました。Aさんの表情は硬く、窓の外を向き、一点を凝視していました。ご家族の目には涙が浮かんでいます。同席していた私は、正直、何と声をかけるべきなのか分からず、その場に立ち尽くしているだけでした。
体を動かすことさえ辛いながらAさんは、筆記で唯一私に伝えてくれたことがありました。「1週間後に娘の結婚式を控えている。それまでにどうにかしたい。」と。しかし、現状は厳しく結婚式への参列は困難でした。ご家族からその旨を伝えてられると、Aさんはまるですべての力が抜けたように・・・放心状態でした。私は心が苦しくなりました。「何かできることはないのか?このままでいいのか?」思いばかりが先立ち、実際はAさんやご家族に対して何も対応できずにいました。
その後、カンファレンスにて私たち看護師にできることはないのか話し合い、いろいろとご家族に提案しました。私もAさんとコミュニケーションを図ろうと、寄り添い訴えを傾聴しました。普段から表情が硬く、感情を表出しない方でしたが、窓の外を見ながら涙を流されていた事を今でも忘れられません。

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