新人が語る心に残る看護場面
2019.04.30 車椅子に座ること
臥床がちのAさんは自宅への退院を希望されていたので、車椅子乗車する時間を設けようとチームで動いていました。
その日も、朝のカンファレンスで先輩と車椅子乗車のことについて話し合っていました。私は『患者さんにとって何も用事がないのに、ただリハビリのために車椅子に座っても、すぐベッドに戻りたくならないかな?』と思ったので、昼食10分前にAさんのところへ行き「食事の時、車椅子に乗りませんか?」と提案しました。「いいね。お願いします。」と笑顔のAさんでした。私が抱え込みで車椅子に乗車させ、さらに窓から景色が見える位置に車椅子を移動させました。「食事が来るまで待っててくれますか?」と声をかけ、食事が到着したので配膳しました。
しばらくするとAさんからナースコールがありました。『もうそろそろベッドに戻りたいのかな?』と思いながら訪室すると、「昼のお薬ちょうだい。やっぱり気分が違うね。もう少し、車椅子に座っています。」と言い、この日は結果的に40分間座ることができました。
この日から、昼食時には車椅子で過ごすことが看護計画に加わり、チームで関わっていきました。さらにリハビリの効果もあり、車椅子への移動も腰支え程度で可能になりました。食事以外でも座って過ごされるようになり、無事、自宅へ退院されました。
食事など日常生活の一部が体を動かすリハビリになること、そしてそのことが患者さんの意欲につながると、この経験を通し実感しました。