新人が語る心に残る看護場面
2020.01.23 リハビリパンツ
Aさんは50代の終末期のがん患者さんで、もともと意思表示が少ない方でした。私はAさんの気持ちの読み取りづらさを感じ、苦手意識を持っていました。
Aさんは疼痛や倦怠感が常にあり、意識レベルも低下し始めた頃、車いすに乗車しトイレへ行くことが難しくなってきました。ご家族や看護師がリハビリパンツの使用を勧めてみましたが、Aさんは「嫌だ。」と拒否。しかしAさんの状態は日々悪化し、ついにリハビリパンツを着用するようになりました。そんな時、夜勤でAさんを受け持つことになりました。「あぁ、今日の受け持ちはAさんか。うまく関われるかな。」と不安になりながらの受け持ち。Aさんからなかなか尿意の訴えがなかったため、Aさんへ排尿誘導をしますが「出ない。」と一言。私は他の業務をしながら、Aさんの様子を見に何度も伺いました。消灯前再度訪室すると、Aさんはうなだれるようにベッドに座っていました。「Aさん、どこか痛いですか?」と声をかけますが、返答はありません。よく見るとAさんは失禁をしていました。「Aさん。汚れてしまったみたいなので、手伝いますからお着替えしましょうか。」と声をかけますが、全く反応がありません。何度か繰り返し声をかけていると「やりたくない。」とおっしゃいました。私はどうしたらよいのかわからず、先輩へ相談しました。少し時間を空けて、先輩がAさんのもとを訪ねるとAさんは着替えを始めたのです。
その後、先輩とAさんとの関わりについて振り返りました。まだ若く、最後までリハビリパンツの着用を嫌がっていたAさんは、いろいろなことができなくなっていく自分を受け止められていなかったこと、自尊心が傷つけられたかもしれないことを私は考えていなかったと思います。そしてAさんの気持ちをよく理解し、その気持ちに寄り添った声掛けや援助ができていれば、と後悔が残りました。
Aさんはその後自宅退院し、1週間ほどで亡くなられたと聞きました。「患者さんに寄り添う看護」について改めて考えさせられました。