新人が語る心に残る看護場面

2020.06.05 五感

Aさんは全盲の方でした。ある日勤の受け持ちの日、Aさんからナースコールがありました。「トイレに行きたい。」とおっしゃったので、いつもと同じように手をつないでトイレまで歩行介助をしようと、「では行きましょう。」と声をかけたときです。Aさんから「今日はすごく忙しいみたいだね。今も歩き回っていたでしょう。大変なときに、トイレで呼んでしまって申し訳ないね。」とおっしゃいました。確かにAさんのおっしゃる通り、その日は午前中に複数の退院患者さんの対応、手術への出棟対応があり、Aさんの入院されている大部屋を朝から行ったり来たりしていました。目が見えず、私の動きは見えないはずのAさんが、なぜ私の様子が手に取るようにわかったのか不思議に思いました。そこでAさんへ「なぜ忙しいってわかったんですか?」と尋ねてみました。するとAさんから「僕はね、目が見えないでしょ?だからその分、すごく耳がいいんだよ。きっと敏感なんだね。お隣の方は退院されたでしょう?それに今○○さんが来てくれた時に、息が上がっていたしいつもより早口な感じがしたから、忙しいときに呼んでしまって申し訳ないなって思ったんだよ。」という言葉が返ってきました。私はその言葉を聞き、ハッと我に返りました。患者さんは、私が思う以上に看護師の言動や行動をよく見たり、聞いたりしていることに気づかされたのです。

この経験以来、私は忙しくても患者さんと接するときは、できる限りゆっくりと穏やかに会話をするよう意識するようになりました。患者さんは看護師の言葉だけでなく表情、雰囲気など、五感を使って感じ取っています。だからこそ看護師は態度や言動を一つ一つに気を配り、患者さんが安心して入院生活を過ごせるようにしていかなければならないと実感しました。

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