新人が語る心に残る看護場面
2020.11.16 手術
私は子宮全摘術を受けるAさんの器械出し担当として、手術に就くことになりました。手術に就くにあたり、Aさんの入院までの経過や既往歴、術式など基本的な情報収集はしていました。
手術当日、外回り担当の先輩看護師がAさんを手術室入口までお迎えに行っているとき、私はいつものようにAさんが入室してから麻酔が導入されるまでの流れがスムーズにいくように、器械出しのマニュアルを見返しや拾い物の確認など器械出し業務の準備で手一杯でした。
Aさんが部屋に入室し椅子に座ったとき、急にAさんがポロポロと涙を流し始めました。私は今まで緊張している患者さんは何度か会ったことはありますが、泣き始めて感情失禁している方は初めてでした。すると先輩看護師はAさんの背中をさすりながら「大丈夫ですよ。不安ですよね。」と声をかけていました。私はどのように対応すればよいのか分からず、Aさんと先輩看護師の様子をただ見ていることしかできませんでした。
私は入職して数か月手術室で働いています。麻酔導入までの一連の業務に慣れてきて、流れ作業のようになっていたと気づかされました。患者さんはどのような気持ちで手術に臨んでいるのか、特にAさんは女性として子宮が自分の体から無くなってしまうという喪失感、術後の不安感など今考えたら予測できます。しかしその時の自分は、患者さんの思いを考えて手術に臨めていませんでした。
患者さんにとって手術を受けるということはとても緊張だけでなく、さまざまな恐怖や不安を感じる経験です。私たち看護師にとっては何度も就いている手術であっても、患者さんにとっては人生で一度の経験であることを改めて実感し、手術室看護師として肝に銘じた体験でした。