新人が語る心に残る看護場面
2021.06.10 家族にも寄り添う
私が手術室業務の外回り業務を始めたばかりの頃の体験です。
私が初めて介助に入る小児患者の手術は、5歳のCくんでした。
Cくんが手術室に入室するために、先輩看護師とともに手術室の入り口で患者確認を行った後、Cくんと一緒に入室しようとしたときのことです。Cくんはとても嫌がり「ママも一緒に行く!」と泣き出してしまいました。Cくんのお母さんは「ママは行けないの。看護師さんがいるから大丈夫だよ。」とCくんをなだめていたのですが、お母さんもだんだん目に涙をためている様子でした。とてもCくんを預かって入室する状態ではなくなってしまいました。
そんな中、先輩がお母さんへ「お母さんも手術室の中まで一緒に来てみましょうか。」と声をかけました。Cくんはお母さんに抱っこしてもらったまま、手術室の部屋へ案内し、麻酔導入後Cくんが眠るまでお母さんにそばで見守ってもらうよう、先輩が誘導をしていました。そしてCくんが眠った後、先輩はお母さんとともに手術室の入り口まで歩きながら、お母さんの不安な思いを傾聴し、気持ちの整理を図っていました。
私はその時まで、手術を受ける患者さん本人にしか目がいっていなかったことに気づきました。この出来事をきっかけに、患者さんだけでなく、患者さん家族の思いにも寄り添い、声掛けや傾聴をする姿勢を持つことの大切さを学ぶことができました。手術室では患者さんや家族とコミュニケーションをとれる時間は限られていますが、限られた時間の中でそれぞれの持つ思いに寄り添える看護師になれるよう今後も努力していきたいと思いました。