新人が語る心に残る看護場面
2021.07.07 傾聴
入職して数か月経ち、受け持つ患者さんの数が増えてきた頃のことです。下咽頭がん疑いの精査目的で入院してきたAさんを受け持ちました。Aさんは今回の入院をただの検査入院だと、軽い気持ちで入院されていました。ところが精査の結果、下咽頭がんであることがわかりました。医師から病名、手術が必要となること、手術をすると生涯声を出すことができなくなることの説明がありました。説明に同席することができなかった私は、Aさんの反応を記録に残すために、Aさんのもとへ向かおうとしていました。その時、先輩から「Aさんがとてもショックを受けて泣いてるよ。ちょっと話を聞いてあげて。ただ話を聞くだけでいいから。」と言われました。私は、話を聞くくらいなら私にもできるだろうと思い、Aさんのところへ向かいました。
Aさんは「人には優しくしてきたのに、どうして自分がこんな目に合うのか」「奥さんをガンで亡くして、うつ病にもなってやっと最近復活してきたところだったのに」「今は首をつらないように頑張ります」など、様々なことを話してくれました。泣きながら話すAさんを前に、私は「そうですね。辛いですね。」などの相槌を打つことしかできませんでした。
その後Aさんは手術を受け、リハビリや吸引手技の練習などを一生懸命頑張って、無事に退院されました。
私は今でもAさんの話を聞いたときのことが忘れられません。確かに「傾聴」という看護はありますが、私の対応はAさんにとって看護となっていたのか、今でも考えています。