新人が語る心に残る看護場面

2021.07.07 観察

独り立ちして間もない頃の話です。私は一人で一部屋の受け持ちをするようになりました。ある時腰部脊柱管狭窄症で手術をしたAさんを3日間連続で受け持つ機会がありました。Aさんは術後の疼痛が強く、リハビリの時以外はほとんどベッド上で過ごしていることが多い方でした。私は毎日バイタルサインを測定したり、車いすに頑張って乗車してもらえるよう離床を促したりしていましたが、用事が済むと、すぐに別の患者さんの所へ行くようになっていました。今思えば毎日受け持つ中で、業務が流れ作業のようになってしまっていたと思います。

受け持ち3日目の時、Aさんから「体を拭いてほしい」と依頼されました。その日はAさんの体拭きを先輩看護師へお願いし、私の代わりに体拭きを行ってくだいました。その後、先輩から「いつもAさんの観察って何してる?」と声をかけられました。私は創部の観察や痛みの程度、知覚や感覚、運動障害がないかなどと答えました。すると先輩が「ちょっとAさんの足についているネームベルトを見てきて。」と言いました。急いでAさんのもとへ行き先輩が指摘した部分を見てみると、ネームベルトが足首にピッタリついていて、表皮剝離ができている状態でした。今までずっと同じ部位が圧迫されていたためにできてしまったのだ、とすぐにわかりました。Aさんは「実は昨日から痛い気がしてたんだけど、あなた忙しそうで言えなかったの。ごめんなさいね。」とおっしゃいました。業務が忙しく、Aさんにもそれが伝わってしまっていたこと、バイタル測定や創部だけでなく毎日細かく観察をしていれば絶対に気づけていたこと、そしてなによりAさんに謝られてしまったことに、とても申し訳ない気持ちになりました。

それからは時間がない中でも会話をして、患者さんの状態からどんなリスクがあるのか考えて行動するように心がけています。勉強不足でアセスメント能力が足りないと感じることも多いですが、そのことに気づかせてくれたAさんと先輩にはとても感謝しています。

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