新人が語る心に残る看護場面
2021.12.21 優しさに助けられて
私が入職して間もない頃、化学療法のために入院されていたAさんがいらっしゃいました。Aさんは私が新人であると知ってから、廊下や病室で顔を合わせると名前を呼んだり、手をふったりしてくださいました。私はそんなAさんのことを、いつも明るくて優しい人だなと思っていました。
入職して4か月経った頃、Aさんが再び化学療法のために再入院されました。Aさんが入院した部屋は大部屋で、Aさんと同じような疾患の方や治療を行っている方が入院されていました。ある日Aさんと同室の患者さんの中に、容態が悪化したため今後は積極的な治療を行わない方針となった方がいらっしゃいました。その方の経過を見ていたAさんは、私に「私、あの人知ってるの。前はあんなに元気だったのに、今じゃすっかり変わってしまって。私もいつかああなるのかもしれない。旅行にだって行ってみたいし、やりたいことはまだあるの。あなたも最初の頃は危なっかしくて大丈夫かなって思ってたけど。今じゃしっかりしてきたわよ。こんな風に新人さんが立派になっていくのも見ていたいけれど、どうなるんだろう。怖いの。」と涙ながらに話してくださいました。私もAさんは私の名前を一番に覚えてくれて、嬉しかったことを思い出しました。いつも明るいAさんの別の顔を見て、私たちは2人で泣いてしまいました。その後、Aさんは化学療法を無事終えて退院されました。
私はAさんの思いや優しさに助けられていたことを感じました。それと同時に、患者さんの苦痛を少しでも取り除くことができる看護師になりたい、と強く思いました。