新人が語る心に残る看護場面
2021.12.21 目線
入職して間もない6月ごろの話です。失語があるAさんを受け持たせていただくことが何度かありました。Aさんはいつも何かを叫んだり、ちぐはぐな言葉を話したりしていました。私は何を話しているか理解できなかったこともあり、Aさんの話を聴き流してしまうことがありました。そんなある日「トイレ、トイレ。」とAさんが訴えました。Aさんは歩行障害があることやナースコールの理解も得られにくい方だったので、トイレの時は終始見守り介助を行っていました。私はAさんと一緒にトイレまで行き、見守り介助をしていました。しかし何分経っても声がかかりません。私は業務に回れない焦りがあり、「Aさん、まだかかりそうですか。一度戻りましょうか。」と強い口調で声をかけてしまいました。するとAさんは怒った様子で「もういいよ。違う、違う。」と訴えています。私も何度か声をかけますが、Aさんは全く立ち上がる様子はありません。私はどうしていいかわからず、先輩を呼びに行き、代わりに対応していただきました。先輩は腰を落とし、Aさんの目線に合わせ、ゆっくりと落ち着いた口調で話しかけていました。するとAさんは怒りも収まり、すっと立ち上がりにこやかに病室に戻りました。
先輩の関わりを見て、私は「どうせ話が伝わらない。理解は得られないだろう。」と思い、Aさんに対して一つ一つの関わりが雑になってしまっていたこと、Aさんも私の態度を見抜いていたことに気づき、とても反省しました。それから私は、どんなに忙しくても患者さんと目を合わせて落ち着いて接し、寄り添う姿勢を心がけています。Aさんとの関わりから学んだことを心に刻んで、患者さんと接していきたいと思います。