新人が語る心に残る看護場面
2022.07.29 患者さんの一言
Aさんは、私が入職して間もない頃、舌がんに対する手術目的で入院されました。私が入院日に受け持ちで、翌日の手術説明など入院オリエンテーションを実施しました。まだ入院受けも慣れておらず、拙い説明でわかりづらい部分も多かったと思いますが、Aさんは「術後、元通りに話したり食べたりすることができるのか不安があります。」と術後の不安を語ってくれました。私はAさんの話を聞き、術後の流れを話すことしかできませんでした。
Aさんの術後、何日間か受け持たせていただきました。術直後は経管栄養の投与をおこなっていたり、疼痛が強く発声するのも難しい様子でした。Aさんが今後どのように回復して行くのか、私自身不安な気持ちもありました。しかししばらくして受け持った際には、疼痛も落ち着き、会話することができるようになっていました。嚥下機能も回復し、退院のめどがたつようになったのです。そして退院の日も私がAさんの受け持ちをしました。Aさんのもとで退院の書類などの受け渡しを行い、最後にネームベルトを切るときAさんが「つけてもらうのも、外してもらうのも〇〇さん(私)でしたね。お世話になりました。ありがとう。」と言葉をかけてくれました。その時、最初にオリエンテーションをしたことを覚えていてくれたことの嬉しさ、入院時に不安を訴えていたけど少しは寄り添った看護ができたのかな、回復して無事退院することができてよかったなど、たくさんの思いが駆け巡りました。Aさんにとっては何気ない一言だったのかもしれません。しかし自分が行った看護を振り返るきっかけになりました。