新人が語る心に残る看護場面
2022.07.29 患者さんの思い
まだ入職して2か月も経っていない頃、3回目の夜勤の時、心不全で入院されていたAさんとお話する機会がありました。私はその日、Aさんの受け持ちではありませんでしたが、受け持ちの先輩が休憩に入っている時にAさんからナースコールがあり、Aさんのもとへ向かいました。
Aさんは「氷を持ってきてほしい」とおっしゃいました。Aさんは疾患の影響で水分制限があり、氷を食べることでのどの渇きを潤していました。私はすぐに氷を準備し、Aさんのもとへもう一度伺いました。すると突然「死にたいです。殺してもらえないですか。」と真っすぐ私の目を見て、落ち着いた口調で話しました。それまでAさんからそのような言動は全く見られていなかったので、私自身とても衝撃を受けたのを覚えています。私は恐る恐る「どうしてそう思うのですか」と尋ねてみました。すると「こんなに看護師さんにお世話してもらって申し訳ないし、情けない。」とおっしゃいました。看護師を含めて多くのスタッフに迷惑をかけていると感じているようでした。私はAさんに「私たちは迷惑とは思ってないですよ」と伝えましたが、他にどのような声をかければよかったのかわからず、ただAさんの話を聞くことしかできませんでした。
それまでADLが自立していて、仕事もして日常生活を送っていたAさんにとって、長期にわたり入院生活を送ることがどれだけ身体的・精神的・社会的苦痛をもたらすかを感じた出来事でした。そして私たち医療者に対して「してもらって申し訳ない」という思いから、自分を責めてしまう患者さんもいるのだと気づかされました。患者さんが入院生活を送る中での苦痛や、思いに気づき、寄り添い、少しでもその苦痛が緩和できるようにコミュニケーションをとりケアをしていきたいと思いました。