新人が語る心に残る看護場面
2022.09.13 患者さんの力に
悪性リンパ腫で化学療法2クール目を行うために入院されていたAさんがいました。私は2クール目開始後7日目から受け持ちました。はじめは「便秘になっちゃった。初めて治療をしたときと同じで、また大変だ。」と少し不安そうに話していました。しかし徐々に便秘だけではなく、嘔気や倦怠感、食欲不振などの副作用も出てきました。Aさん自身も食事がとれず、思うように体が動かせない辛さから言葉も少なくなっていきました。私はAさんへ何もできないもどかしさを感じていました。
数日が経ち、夜勤でAさんを受け持ったとき、Aさんから「私が治療をしようと思ったのは、どうしても夫の17回忌まで生きていたいと思ったの。夫と二人三脚で助け合ってきて、いろんなところへ連れて行ってもらったの。私が頑張って夫に感謝を伝えたい。でもこんなに苦しいなら治療をやめて、早めに夫のところへ行ってもいいんじゃないかな、って最近思い始めたの。」と涙ぐみながら話してくれました。私はAさんが長い間こんなにも苦しんでいたなんて知らず、もっと早くその思いに耳を傾けるべきだったのではないかと思いました。その後、Aさんの体調は改善していき、退院が決まりました。退院の日、Aさんから「あのとき、話を聴いてくれてありがとう。看護師さんに話した後、少し楽になったの。もう少し頑張ってみようと思います。またよろしくね。」とおっしゃってくださいました。あの時、私はAさんの話に耳を傾けることしかできず、私の対応はAさんにとって本当に良かったのかと悩んでいました。
がんと告知され、辛い副作用に耐えながら治療する患者さんの背景にはいろんな思いがあると思います。今の思いや生きる希望を聞き、少しでも患者さんの力になれるように看護師としてできることを考えながら、関わっていきたいと思いました。