新人が語る心に残る看護場面
2023.03.28 患者さんに寄り添う
私がまだ夜勤の独り立ちをする前、夕食後の配薬時に、緊急入院後にカテーテル治療を予定していたAさんから「治療を受けたくない」と明かされたことがあります。理由は10年ほど前にAさんの夫がカテーテル治療を行ったあと、1年ほどで亡くなってしまい、カテーテル治療の同意書にサインを書いてしまったことを後悔していること、そして大きな治療を受けてまで生きながらえたくないというものでした。時間は19時過ぎで受け持ち患者さんの介助量も多かったため、早く他の患者さんの検温に回りたい気持ちも強く、私は話を聞くことを躊躇っていました。しかし、涙ながらに訴えるAさんを見て(今の優先はAさんの話をしっかり聞くこと。だから10分だけはしっかり話を聞こう。)とAさんに寄り添うことを決めました。その後はAさんの訴えをリーダーへ報告し記録に残したことで、ご家族を交えて医師から再度丁寧な説明があり、「昨日は取り乱してごめんなさい。よろしくお願いします。」とAさんは治療を承諾しました。後日、治療後に受け持ちになった時、「あの時は話を聞いてくれてありがとうね。聞いてもらえて嬉しかったよ。」と言われ、あの時忙しい中で時間を割いて良かったと思いました。医療者にとっては低侵襲のカテーテル治療でも、患者さんにとっては大きなライフイベントであるため、不安や不明な点がないかしっかり寄り添うことの必要性を改めて実感した出来事になりました。また、慣れないうちは検温を回ることで精一杯でしたが、ゆっくり患者さんの話を聞けるくらいの余裕を持って回ることを目標に日々取り組むようになりました。