新人が語る心に残る看護場面
2020.06.05 私たちの声
Aさんは聴力が低下していたため補聴器を使用している方でした。既往に脳梗塞もあり、いつも目は開いていましたがAさんは「あー」「うー」とうなる他は、言葉として発することはあまりありませんでした。ケアの時には「Aさん、○○しますね。」など声をかけますが、Aさんからの反応はあまりなく、少し寂しい思いがありました。しかし入院期間中、たった一度だけ「Aさん」と呼びかけた時に、「はい」と返事が返ってきたのです。その時は車いす移乗の介助中で、先輩看護師もいました。先輩は久しぶりにAさんのケアに入り、「Aさん、久しぶりですね!」と声をかけ、Aさんの周りの雰囲気がにぎやかだったのです。私がAさんに呼びかけて返事が返ってきたのは、そのすぐ後のことでした。普段はあまり発語のないAさんでも、やはり私たちの声は聞こえているのだと思った瞬間でした。ケアの時、患者さんと会話ができることはうれしいですが、話すことだけがコミュニケーションではありません。例え返事がなくても、いつも声かけを忘れずに患者さんと関わり続けていきたいと思いました。