新人が語る心に残る看護場面
2020.01.23 小さな気づき
看護師になり半年経った時に感じたことは、学生の頃によく行っていた患者さんと直接関わるようなケアがなかなかできないということでした。学生の頃には一人の患者さんのみを受け持ち、清潔ケアやコミュニケーションなど患者さんと密接に関われることが多かったです。そして看護師になっても患者さんとの関わりを第一に考えていきたいと思っていました。しかし実際の看護師としての日々は、記録や医師の診療補助業務に追われ、そのような時間をなかなか取ることができずにいました。そのことに歯がゆさを感じていたある日、Aさんを受け持ちました。
Aさんは脊椎損傷のため、体位変換に看護師数名で行っている状況でした。そのため介助のために人を集めることに時間がかかり、長時間同じ体勢になってしまい腰部や臀部の痛みを訴えているAさんに、体位変換がなかなか行うことができずにいました。そんな時、先輩看護師が手にビニールを当て、Aさんの背中を除圧しているところを目にしました。その際、Aさんはとびっきりの笑顔で「ありがとう。本当に気持ちいいよ。」と繰り返し話されていました。そのAさんの様子を見て、時間がない中でも小さな工夫で患者さんを笑顔にできるのだと衝撃を受けました。そして自分は忙しさを理由に患者さんのことを十分に考えることができていなかった、と感じました。
それからは忙しいときでも時間を見つけて除圧を行い、Aさんが物を取れるように環境整備を意識して行いました。Aさんが一般病棟へ転棟するとき、涙ぐみながら握手をしてくれました。今後もどんなに忙しくても、小さな気づきや思いやりを忘れずに患者さんと関わっていきたいと思います。