新人が語る心に残る看護場面
2023.04.27 反省を活かして
入職して初めて永久気管孔を持ったAさんの手術を担当したことについてです。手術の前日に術前訪問に行きました。訪室すると、すぐに永久気管孔があることをアピールし、発語ができないことを伝えてくれました。私はクローズドクエスチョンを用いて、血圧の測定部位について質問すると頑なに「右で、血圧も点滴も右で。」と口パク(口の動き)で表現していました。理由について問うと、口の動きが早すぎて読み取ることができず、何度も聞き直してしまったせいか、伝えるのを諦めて首を振るようになってしまいました。仕方なく次の質問に移りましたがどのような理由だったのか気になりました。Aさんは手術の経験が何度もあったため、前回の手術で気になったことについても質問すると質問をし終わる前に首を振り始めていました。その後は、全て投げやりになった様子だったため、しつこすぎるのも良くないと思い、挨拶をして退室しました。
最初は私がクローズドクエスチョンを使用したことにより、Aさんは答えやすく私もAさんの返答を読み取ることができ、両者ともストレスのない会話をすることができました。
しかし、理由などの長い文章では口の動きからだけでは読み取ることができず、Aさんに「この看護師は私が伝えようとしている事を理解してくれない」という気持ちを抱いてしまったと考えました。日常的に「伝わらない」と感じている患者にとって担当の看護師に伝わらないことは辛いことであると考えられました。
次の日、手術当日は前日の反省を生かして筆談を使用し、さらに声かけの頻度を増やしました。すると、前日に理解できなかった理由や不安などを理解することができました。術後も「ありがとう」と言っていただきました。手術室は病棟と違って一人の患者さんと関わる時間が短いため、信頼関係を築くのが難しいことがあります。その環境の中でもコミュニケーションを取ることを諦めずに、患者に合った方法をみつけて実施していくことが大切だと学びました。