新人が語る心に残る看護場面

2020.11.16 真摯に向き合う

私が入院当日に受け持ったAさんは、口腔内のがんで手術を行った方でした。手術を終え、病室に戻ってきたAさんは胃管が入っており気持ち悪さや術後の疼痛で苦しんでいました。私はそんなAさんに対して先輩に痛み止めを使用する相談をするくらいで、Aさんの苦痛を取り除く関わりがそこまで出来ていなかったと思います。術後しばらく経ちそろそろ退院が見えてくる頃、創部内に液体が溜まっているのがわかり、ドレーンを挿入することになったのです。ドレーンからは排液が常時流出し、パジャマもびしょびしょになってしまうほどでした。さらにガーゼをテープで留めていたことでかぶれてしまい、Aさんはそのことをとても気にしていました。私はAさんを受け持った時には、ドレーンのガーゼ交換や皮膚の状態を観察し、少しでもAさんが安楽に過ごせるように努めました。そしてAさんの状態は少しずつ改善していったのです。

あるとき、私は3連休後久しぶりにAさんを受け持つこととなりました。朝、情報収集をしていると、私が休んでいる間にドレーンが自然抜去したり、再手術になるかもしれない話があったりしたことを知りました。私はAさんに「ここ数日間大変でしたね。」と声をかけると、「そうなのよ。○○さん(私)の顔が浮かんだわよ。いてくれたらよかったのに。」とおっしゃってくださいました。Aさんのその言葉を、私はとてもうれしく思いました。結局Aさんの創部の状態は良くなり、再手術をすることなく退院の日を迎えることができました。私は退院日を受け持たせていただき、挨拶をしました。「本当に一番お世話になって、心の支えになったよ。ありがとう。」とおっしゃってくださいました。この言葉は、私が入職してから一番うれしかった言葉です。

Aさんの入院から退院まで関わらせていただき、さまざまな苦痛と向き合っている患者さんに対して、自分はいったい何ができるのだろうと考えていました。一番大切なことは患者さんの立場に立ち、患者さんの向き合うことではないかと思いました。また物理的なケアだけでなく、会話など形のないことも患者さんの重要なケアになっていると感じました。これからも患者さんの苦痛や希望に対して真摯に向き合い、ケアを実践できるような看護師を目指していきたいです。

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