新人が語る心に残る看護場面

2019.04.30 私の願い

入職して2ヶ月くらいのある朝、出勤して院内を歩いていると「すみません、採血室へはどう行ったらいいのかしら?」と入院患者さんに道を聞かれました。「○○病棟から来たのだけど、分からなくなってしまって」と。「え?私もその病棟で働いているのですよ。」「じゃあ、またお会いするかもしれませんね!」と、このちょっとした偶然がAさんとの出会いでした。数日後、受け持ち患者さんの検温に行くと「この前、道を教えてくださった方ね」とAさんに声を掛けられました。
Aさんは化学療法目的で入院されていたので長期間で入退院を繰り返す患者さんの1人でした。ある日Aさんは現在の心の内をお話してくれました。「がんだと聞いたときは本当に驚きが隠せなかった。自分は気づかないうちに誰かを傷つけたりしちゃって、バチが当たったのかしらなんて考えるの。涙の出る夜もあるけど・・・。でも出来ることをやらなくちゃ、まずはこの8クールを乗り越えてね。」と少し涙ぐむ様子もありました。私はひたすらAさんの話を聞き、受け止めました。「話してくださってありがとうございます。私でよければ何でも言ってください」とお伝えした。6クールが終わったところで、私のチーム替えがあり、Aさんの担当ではなくなりましたが時間があれば顔を出しに行き、Aさんも声を掛けてくれ、たまには弱音を聞いたりもします。
私はAさんと出会って初めて心の底から「この人の力になれるよう頑張りたい。頼れる看護師になりたい。」という気持ちが芽生えました。私たちに癌を消すことは出来ませんが、自分の出来る精一杯を捧げて、8クールを終えた後、どうかAさんの苦悩と努力が報われますようにと、私は願っています。

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