新人が語る心に残る看護場面

2018.11.06 1年目だけど

30代のAさんは進行性の癌で、腹部と両下肢の浮腫がひどく、疼痛で夜も眠れない状況でした。経験年数のある先輩看護師には痛みを訴え、涙を見せることもありましたが、1年目の私には「大丈夫、大丈夫」と言って何も訴えません。それでもつらそうな表情で足をさすっている姿を見て、私は「足浴をしてみませんか?」と提案しました。しかし、「大丈夫です」と、あっさり断られてしまいました。
私は「自分が1年目だからかな。何か出来ることはないかな。」と無力な自分にやるせない気持ちになりました。Aさんにどう関わればいいか分からず、思い切って先輩に相談すると「病気や症状の話はやめて、Aさんのことを知ってみることから始めてみれば?」とアドバイスをもらいました。私はAさんの趣味や好きなもの、好きな食べ物、仕事の話など普通の話をしてみると「○○(キャラクター)が好きなの!これを集めるのが好きなのよ。あなたも好き?」と、笑顔で話してくれました。楽しくお話しし退室した後、足の痛みが出てきたAさんでしたが、また「大丈夫、大丈夫。」と。何も出来ない自分が嫌になり、思い切って「何も出来ずにすみません。私は何が出来ますか?1年目の私だと何も出来ないですか?」と聞いてみました。すると「あなたが側にいてくれるだけでいいの。お話出来るだけで充分なのよ。」とAさんは言いました。私はその言葉を聞いて、Aさんにとって好きな物の話であったり、世間話などでも、話をしている間は痛みを忘れることが出来るというケアが出来ていることに気づけました。
今ではお会いする度にキャラクターのグッズを見せてくれたり、「足浴もやってみようかな」と前向きな発言を聞けるようになりました。1年目看護師でも直接的なケアだけでなく、会話することで信頼関係が構築できたり、症状が緩和することを学ぶことが出来たエピソードでした。

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