新人が語る心に残る看護場面

2018.11.06 Aさんからのメッセージ

「リハビリも体拭きも、もう何もかも嫌なんです」とケアのために訪室した私にAさんは言いました。Aさんは肺癌で治療していましたが、脳転移が見つかり、外来受診から緊急入院してきた方です。退院希望があり、外泊の予定も立っていたので『急にどうしたんだろう?』と思い「もうすぐ外泊の予定だったと思いますが、何かあったのですか?」と聞いてみると「私はね外泊でなく退院したいの。外来受診に来ただけなのに、見てください、こんなもの(酸素やモニター類)付いちゃって。いきなり入院させられて。病気の事も直らないって事も分かってるの。だからこそ帰りたいの。」とおっしゃいました。現在の状況が受け入れられないAさんに、『こんな時、どうしたらいいのだろう?』と戸惑いましたが、Aさんの気持ちを精一杯受け止めようと思い、じっくり話を聞きました。「急な入院で自宅のことも心配だし、やらなきゃいけないことも沢山あるの。」「ここでこのまま死んでしまうのかしら。」とAさんは話してくれました。Aさんの事を考えると私も辛くなりましたが、「入院してこんなに話を聞いてくれたの、あなたが初めてよ。気持ちを分かってくれるのが嬉しいです。」と笑顔を見せてくれました。
Aさんはその後退院しましたが、体調が悪化し再入院後亡くなりました。Aさんに残された貴重な一日一日に対し、もっと何かすれば良かったと後悔も残りました。私はこの事をAさんからのメッセージだとして心にとめ、今後、終末期のケアにつながるようにしていきたいと思いました。

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