私たちのめざす看護

私たちの看護

2012.05.21

治療を続けながらも自分らしさを・・・。

怖くて辛いイメージのある「がん」という病気ですが、生涯のうちで2人に1人 はがんにかかる時代になりました。がん治療はどんどん進歩し、特に、「化学療 法」といわれる分野は次々に新しい薬が開発され、治療を受ける方も多くいらっ しゃいます。そして、この治療は外来で通院しながら行っていく事が主流となっ てきました。 70代のAさん。Aさんは外来で抗がん剤の点滴をしたあとに「インフューザー」 といわれるお持ち帰り用の特殊な容器に入った抗がん剤を付けたまま自宅に帰 る、という治療をしています。これは46時間かけてゆっくりと抗がん剤を注入していくものです。
初めて外来化学療法センターにいらしたときのAさんは緊張のせいか、表情はカチコチ。お持ち帰りポンプの取り 扱いの説明を聞いている姿は自信なさげな感じで「あ~、入院してやりたい・・・。」とポツリ・・・。それでも 「うん、うん、分かった。この黒い止め具が開いていることを確認しておけば、ちゃんと抗がん剤は流れるんだ ね。」と言って帰っていきました。2日後、お持ち帰りポンプを外しに病院にいらしたAさん。「黒い止め具がち ゃんと閉まっていることを確認してたからばっちりだよ!!」と。「???Aさん、逆なんだけれど・・・」「あ つ、抗がん剤がたくさん残ってる!!」
そんなAさんも治療を始めて1年。「いやぁ~、あの時は失敗したなぁ~」と照れながら話してくれます。今やポ ンプの扱いはもちろんのこと副作用への対応や体調のことまで、もはやプロ級の自己管理。治療を続けながらも大 好きな畑に出かけ、育てている野菜の話をうれしそうにしてくれます。
ヒトの持つ力は本当に大きいものです。外来という点と点の関わりでも、続けていくことで線になり、患者さんや ご家族は大きな力をつけていかれます。
ゴールの見えない治療を続けていくことは本当にしんどいことです。その中でもできたことはともに喜び、壁にぶ つかった時にはどうすればいいのかを一緒に考えていく。「治療を受けている」という特殊な環境を「日常生活の 1つ。なるべく自然なこと」として患者さん1人1人が自分らしく生活できるための支援を考える日々です。

がん化学療法看護認定看護師 増藤亮子

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