私たちのめざす看護

私たちの看護

2023.11.27

緩和ケア認定看護師として「今」を大切に、寄り添う看護をめざして

当センターには、医師、看護師、薬剤師、心理士、リハビリ療法士、社会福祉士で構成されている緩和ケアチームがあります。近年はがん患者さんだけではなく、慢性疾患や交通外傷、など、非がん患者さんの症状緩和や意思決定支援の介入も増加しています。毎週回診前のチームカンファレンスでは、メンバーが専門的視点から活発に意見を出し合い、症状緩和やケアについて提案し、患者、家族、医療者の橋渡しができるように努めています。緩和ケアチームは患者さんや家族の身体的・精神的、心理社会的苦痛に対処し、できる限りの苦痛緩和と個別的なケアが求められますが、常に心掛けていることは、速やかな対応と「今」しかないその瞬間の関わりを大切にすることです。

呼吸困難で介入依頼があったAさんは、回復の希望を持ちながらも、呼吸困難が強く「もう自分は長くないと思う、はやく楽になりたい」と話され、生きる意欲や希望を語ることはありませんでした。毎日訪室しながら、まずは身体的な苦痛緩和を優先に薬剤調整を行いました。同時に会話自体も負担になるため、対話よりタッチングやマッサージなど非薬物的なケアをおこないました。Aさんは完全に症状は取り切れなくても「そばにいてくれるだけで気持ちも体も楽になるのね」と話されました。不安や死に対する恐怖を共有し、言葉を交わさなくとも、Aさんと同じ時間を共にすることを大切に寄り添いました。長い会話は避けながら、時には筆談でAさんはこれまでの闘病や仕事、人生観、家族との思い出などを語ってくれるようになりました。最期の時が近いことを感じていたAさんに、今一番大切にしたいことや、最期の時までをどう過ごしたいかを伺うと「最後に家族に気持ちを伝えたい」「家に帰りたい」と意思を伝えてくれました。病状は日々変化しており、明日、今と同じように思いを伝えることができるかはわからない状況でした。本人と相談し今の思いを残すことにし、サポートしながら家族一人一人に手紙を書きました。4人分書いたAさんは「よかった。書けたね~」と笑顔でした。そして「家に帰りたい」その気持ちはご家族と共有し退院支援部門や地域医療者と連携し2日後に退院し、数日後ご自宅で永眠されました。

緩和ケアは最後までその人らしく生きることを支えるケアです。身体的苦痛が完全に取り切れないこともありますが、患者さんの心情を理解し、専門的な知識を活かして最期まで患者さんの命に寄り添いながら、「今」を大切に今後も看護をしていきたいと思います。

  緩和ケアチーム専従看護師 福島 里子

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